イタリアンと聞くとデコラティブな内装やボリューム感あるカジュアルな料理をイメージしてしまうが、一瞬フレンチを彷彿させるほど繊細で和の要素も盛り込んだ日本人好みの料理を頂ける。
口に入れた瞬間に新鮮さが伝わるこの旨味は一体何なのか?という意識が働くほど優しくも明確な力を感じる一皿を味わえる。照れくさそうな笑顔の裏にはプロ魂がしっかり確率され、店内には連鎖するように生き生きと働くスタッフの姿が印象的だ。肩書きではない人の思いが伝わる良店である。
自分の存在価値、生きる意味は
「あなたが必要です」と、
言われるか否かだと思います。
オープンして一二年目となりましたが、独立する時には、自分がちょっと気取って食べに行くならこんな感じっていうのをイメージして店作りをしました。
元々はフレンチを目指して愛知県でギャルソンから経験を積みました。その後イタリアンに転向し愛知県の数店でシェフとして修業しました。
ある時、いつか自分の店を持ちたいと言った私に、「なぜ今やらないの?」と背中を押してくれた人がいました。いつかではなく今、目から鱗でした。
開店にあたりひとつ自分のこだわりとしては知り合いが誰もいない地域の選択でした。それはどんな人間かお互い知らない立場で正当に評価してほしかったからです。義理で食べに来てもらっても結局こちらも甘んじる仕事になってしまうと思ったのです。
雇われの料理人でいるとどうしても技術の提供のみに終わってしまいます。ですが自分の店を持った途端どうやって客を喜ばす?そのシンプルな問いがけがいつも頭を巡るようになりました。お客様の反応がダイレクトに感じるのも発信する側にとって嬉しいことのひとつです。
スタッフ全員で
同じ夢を追っかけていますから、
一緒に手探りでやっています。
この世界では資格があっても食えない人は山ほどいます。ましてや30代ともなればシェフとして雇ってもらうことも難しくなります。実際拘束時間の長い仕事だから挫折は後を絶ちません。だからこそ最後まで続けることがプロなのだと思います。
うちで働くスタッフも夢と希望にあふれた仲間たちです。

その子たちに勉強の場を与えることも私の使命です。このサイズの個人店、ここの枠組みの中でのお客様との関わり方を覚えてもらえば独立時にはより自分の器量に近い感覚でやっていけるんじゃないかと思います。オープンして間もない頃は若さゆえカリカリ仕事していました。そんなだからスタッフはすぐに辞めて行き、ある時点で厨房もホールも誰もいなくて私一人で満席になってしまったことがありました。申し訳ない気持ちと惨めさで一杯になったのを今でも覚えています。結果としてお客様に迷惑をかければ全てが成立しなくなるということを忘れず、これからも応援してくれる方々に誠意あるおもてなしでお返ししようと思います。